コラム

フェレットさんのエストロジェン過剰症

避妊しているフェレットさんの副腎皮質機能亢進症は知られていますが、避妊手術していないフェレットさんでもホルモン的な病気になることがあります。

この病気は、エストラスとも呼ばれ、ひどい場合には死亡することもあります。

 

フェレットはもともと交尾排卵動物ですが、逆にこの交尾刺激がないと排卵が起きないため発情が持続します。

発情中、卵巣から分泌させるエストロジェン(性ホルモン)は、発情期特有の身体的変化を引き起こすだけでなく、造血器である骨髄の機能を抑制するという働きを持っています。

その結果、発情が長く続くと、エストロゲンが必要以上に分泌されることになり、その作用によって骨髄形成不全を引き起こします。

そして白血球減少や血小板減少などの再生不良性の貧血を起こすことになります。

近年販売されているフェレットはほとんどが避妊手術済みなのでこの心配はありませんが、中には、一部卵巣が残ってしまっていて発情を示すフェレットもいます。

臨床症状は多岐にわたります。元気消失、食欲不振をはじめ、尾部、腰部、体側の左右対称性の脱毛、外陰部の腫脹、粘液の分泌、それらによる会陰部、鼠蹊部の濡れが見られます。

また貧血のため、歯肉、結膜などの蒼白が認められ、ときに心雑音が聞こえることもあります。

 

治療には原因であるエストロジェンの分泌を押さえるために、通常は卵巣子宮摘出術を行います。

また全身的な状態によっては体力的にそれらの手術が出来ない場合もあるので、発情を終了させるためにhCGなどのホルモンの注射をします。

また貧血や脱水、感染などが見られる場合には、点滴、抗生剤など必要に応じて支持療法を行い、貧血が回復するまでのあいだ長期にわたる看護を行う必要があります。