コラム
うさぎさんの膿瘍
膿瘍とは身体の組織の局部(一部分)に膿が蓄積する症状を指します。ウサギでは膿瘍の発生が多く、膿はチーズのように固まる特徴があります。膿瘍の原因の多くはStaphylococcus aureus、Pasteurella multocida、Proteus spp.などの細菌が原因となります。全身に発生し、細菌感染などに関与する外傷や原因が発見できないことが多く、他の部位から血行性に感染することもあります。外観上は皮膚に膨隆した「しこり」として確認されることが多く、患部の皮膚には発赤や脱毛がみられます。多くは疼みも伴わず、元気や食欲などの一般症状にも問題はみられません。膿瘍は皮下組織以外にも関節、脳、肺、消化管、生殖器(子宮)、眼(虹彩)など様々な場所に発生します。なお、顎や顔に発生した場合は、不正咬合による膿瘍が考えられ、歯の根本的な治療を行わなければなりません。病院では、その「しこり」を注射針で吸引し、内容物を確認して腫瘍などとの鑑別・診断を行います。これは細胞診という検査になります。身体の深いところの膿瘍ではX線検査で確認することもあります。原因菌は膿から細菌検査を行って調べます。
肺に膿が貯まれば肺炎、腹腔では腹膜炎、子宮では子宮蓄膿症、内耳に膿が貯まれば斜頸がみられます。これらの膿瘍に対しては基本的には抗生物質の投与になりますが、ウサギのように固まった膿に対してはなかなか効果がみられません。膿瘍は基本的には外科的に切開し、膿瘍ごと摘出しなければなりません。膿瘍を引きおこしている細菌が少しでも残っていると、再発したり、全身に転移がみられます。もちろん初期でれば適切な内科治療によって完治することもありえます。しかし、膿瘍の初期は小さいために発見されにくく、目立つことなく徐々に進行していきます。
ウサギは無表情であり、さらに重症にならない限り症状がみられない動物ですので、日頃からの健康管理あるいは定期健康診断などを受けて下さい。