コラム
ワンちゃん「犬のエキノコックス症」
エキノコックスは条虫の一種で、もともと北海道でよく見られているものです。しかし、昨年愛知県で定着が認められ、関東でも時折エキノコックス症と診断されるワンちゃんがいます。エキノコックス症自体は単包条虫によるものと多包条虫によるものの2種類がいますが、国内でみられるのは多包条虫によるものです。今回はこの多包条虫によるエキノコックスについて紹介します。
多包条虫(Echinococcus multilocularis)は終宿主であるイヌ科動物と中間宿主であるネズミなどのげっ歯類との間で感染が成立する寄生虫です。ワンちゃんへの感染経路は中間宿主の摂食が主で、感染部位は小腸にほぼ限定されるため症状が出ないかあっても下痢程度で済むことが多いです。しかし、ワンちゃんが感染してしまうとそのうんちを介して人間への感染ルートができてしまいます。人間がエキノコックスの卵を摂取してしまった場合は偶発的中間宿主となり、幼虫(包虫)が脳や肝臓、肺など様々な臓器に寄生して長い時間をかけて重篤な病害を起こします。
仮にワンちゃんが感染しても、駆虫薬の投与で治ります。特にエキノコックスの定着が確認された地域へ行った後、ワンちゃんの体調がおかしくなったりうんちに虫体が出たりしたらすぐ来院するようにしましょう。また、普段からワンちゃんの排せつ物の処理をしたら必ず消毒をしましょう。