コラム

ネコちゃん「ネコさんのダニ予防」

先月、マダニが媒介する重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に感染したネコの治療をされていた獣医師が亡くなられたという、痛ましい報道がございました。
今回は、あたたかい季節に気をつけたい、ネコさんのダニの予防の重要性についてお話します。

 

重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome 、SFTS)とは、主に、SFTSウイルスを保有しているマダニに刺されることで感染するダニ媒介性の感染症です。
感染症法という法律で、E型肝炎、狂犬病、日本脳炎などと同じレベルの危険がある、4類感染症に規定されています。
感染症法では、感染力と罹患した場合の重症度などによって、1類~5類に分類されており、4類感染症は、動物や食べ物などを介してヒトに感染する、人獣共通感染症が該当します。

 

ネコちゃんに寄生するダニは、マダニ、ヒゼンダニなど様々な種類がありますが、特に危険なのは、SFTSウイルスを媒介するフタトゲチマダニやキチマダニなどのマダニです。
成虫は、体長が吸血前で3mmほど、吸血後で10mmほどで、肉眼で見ることができます。
フタトゲチマダニは、北海道から沖縄まで全国に分布しており、どの地域に居住するネコさんでも予防が必要です。
SFTSは、2009年頃から中国でヒトの感染が確認され、2013年に日本で初めて確認されました。
以降、日本でも毎年100人ほどの患者が報告されていて、西日本に多い傾向があります。
マダニは、春から秋のあたたかい季節に、草むらや河川敷などに多く生息し、飼い主さまやネコさんの皮膚に咬み付いて吸着します。また、被毛や衣服などに付着して、おうちの中にも侵入してしまいます。

 

SFTSウイルスを保有したマダニに吸血されると、
・発熱
・下痢嘔吐
・倦怠感
・神経症状
・リンパ節の腫れ
・出血傾向
・多臓器不全
などの症状がみられます。
潜伏期間は6日〜2週間ほどで、飼い主さま、わんちゃん、ネコちゃんの区別なく感染するリスクがあります。

 

ヒトは2023年8月に新型コロナウイルスの治療薬と同じお薬が、SFTSの治療薬として承認されましたが、ネコさんへの安全性や効果は確認されておらず、現時点では対処療法のみです。

 

マダニの活動が活発になる、春から秋にかけて、病院で処方された駆除薬で、予防をすることがとても大切です。
おうちのネコさんだけでなく、ご家族様はもちろん、ネコさんに接する、お友だち、トリミングサロンや動物病院のスタッフなど、まわりのネコさんや人たちを守ることにも繋がります。

 

万が一、寄生されてしまっても、駆虫薬を投与することで、成虫を数時間から数日でほぼ駆除してくれます。

 

マダニは、一度おうちに侵入してしまうと、ネコさんの生活場所、ベットなどの湿度が高い場所に潜伏するため、ネコさんの生活環境を清潔に保つことがとても大切です。
ベッドなどの布製品お洗濯や、お部屋の隅などはこまめに清掃しましょう。
ネコさんを定期的にブラッシングしてあげることも有効です。

 

当院では、飼い主さまとネコちゃんの健康を守るため、健康診断や予防薬の処方を行っております。
定期的に受診しましょう。

 

参考文献
厚生労働省
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000169522.html