コラム
ワンちゃん 『お散歩中の「パクッ」が危険?わんちゃんのエキノコックス症』
楽しい夏休みがやってきました。暑さから逃れようと避暑地を探している方もいるかもしれません。例えば北海道で大自然を感じながらワンちゃんとお散歩をする、なんて計画を立てるのも良いでしょう。ただ、そのお散歩が思わぬ危険を呼び込んでしまうかもしれません。
特に北海道では野生のキツネとネズミの間でエキノコックス(Echinococcus multilocularis)という寄生虫が寄生しています。エキノコックスの卵がネズミに食べられて体の中で成長し、そのネズミをキツネが食べると寄生虫はその腸内で卵を産みます。この卵が糞と一緒に体外へ出てまたネズミの口に入ります。ワンちゃんはエキノコックスのライフステージにとってキツネと同等の位置になるため、キツネの糞を触ったところで感染はしません。しかし、草むらなどにいたネズミを捕まえて食べてしまったり、落ちていた死骸を舐めたり食べたりしてしまった時には感染する可能性があります。感染してもワンちゃんでは大きな症状が出ることは少なく、出てもせいぜい下痢程度です。感染が確認されたら駆虫薬で駆除することができます。
ですが恐ろしいのはこれによって人間への感染ルートができてしまうことです。人間の場合、エキノコックスにとってはネズミと同じ位置にあたります。口から入った卵が孵った後幼虫は肝臓に入り込みます。長期間無症状で経過して徐々に肝臓にダメージを与えていき、さらに幼虫が作った嚢胞は周囲の組織を圧迫します。肝腫大や腹痛、黄疸などの症状が出るまで10年以上要したという報告もあります。そして発症後に放置すると半年ほどで腹水が溜まり始め、死に至ります。根本的に治療するためには外科的に切除するしかありません。
このように、ワンちゃんと人間では症状の出方も予後も大きく異なる病気です。北海道が主な流行地域ですが、そこからの動物の移動に伴って他の地域で感染が確認されることもあります。エキノコックス症は自治体への届け出が必要な病気なので、各自治体の感染症情報をチェックすることでその地域での状況を確認することができます。旅行後のワンちゃんの体調が心配な時はすぐに病院に相談してくださいね。
