コラム
ネコちゃん 「ネコさんにドッグフードをあげても大丈夫?」
診察中にたまに「ドッグフードをネコさんが食べても大丈夫ですか?」という質問を受けることがあります。
結論からいうと、ドッグフードをネコさんが少し食べてしまったからといって、すぐに病気になるわけではありませんが、長期間ドッグフードだけを与えることはおすすめできません。
その大きな理由は、わんちゃんとネコさんでは必要とする栄養素を体内で作る能力が異なるからです。
ネコさんは、進化の過程で動物性の食事に適応した肉食動物のため、わんちゃんよりも食事中のタンパク質への依存度が高いことが特徴です。
ネコさんはごはんから十分なタンパク質が供給されることを前提とした代謝機構を持ち、食事から摂取したアミノ酸をエネルギー源として利用する能力が高く、タンパク質の必要量が多い傾向があります。
ネコさんはわんちゃんと比較して、アルギニンやタウリンなどの必須アミノ酸、ナイアシンやチアミンなどのビタミンB群、コリンなどの必要量が高く、さらにアラキドン酸などの脂肪酸やビタミンAなどの代謝にも大きな違いがあることが報告もあります。
特にタウリンは、ネコさんにとって非常に重要な栄養素です。
わんちゃんは体内でシステインなどからタウリンを合成することができますが、ネコさんはその能力が限られており、食事から十分なタウリンを摂取する必要があります。
タウリンが不足すると、網膜の変性による視覚障害や、拡張型心筋症などを引き起こすことがあります。
実際、1975年にはタウリン不足とネコさんの網膜変性との関連が報告され、その後、タウリン不足による拡張型心筋症も報告されています。
現在では猫用の総合栄養食には必要量のタウリンが配合されているため、適切なキャットフードを食べている健康なネコさんでタウリン欠乏が起こることは一般的ではありません。
しかし、ネコさん用として設計されていないフードを長期間与える場合、このような栄養学的な違いが問題になる可能性があります。
また、アルギニンは、体内で発生するアンモニアを尿素へ変換して処理する尿素回路に必要な必須アミノ酸の1つです。
ネコさんはアルギニンを体内で十分に合成する能力が低く、食事からの量が不足すると、高アンモニア血症や神経症状などが生じた報告もあります。
ドッグフードにもタンパク質やさまざまなアミノ酸、ビタミン、ミネラルなどが含まれていますが、ネコさんに必要な量を満たすように設計されたフードではないため、ネコさんに特有の栄養要求を満たせない可能性があります
おうちのネコさんの健康を守るためには、ネコさん用の「総合栄養食」を主食に選ぶことが大切です。
総合栄養食とは、そのフードとお水を基本として与えることで、そのライフステージに必要な栄養素を満たせるよう設計されたフードのことで、年齢や健康状態に合った製品を選びましょう。
特に成長期、妊娠授乳期、腎臓病や肝臓病などの持病があるネコさんでは、必要な栄養バランスがさらに重要です。
おうちのネコさんについて、間違えてドッグフードを食べさせていた、ドッグフードを好んで食べてしまう、手作り食や療法食について相談したい、などの場合は、自己判断でごはん変更する前に、必ず動物病院へご相談ください。
