コラム

ネコちゃん 「猫の腎臓病について」

師走の候、みなさま、年末年始に向けてご多忙な日々をお過ごしかと思われます。

今年も、残すところあと1ヶ月となりました。

寒くなるこの季節、ネコちゃんにとっては泌尿器のトラブルが増える季節でもあります。

今回は、ネコちゃんの腎臓病についてお話しします。

 

腎臓は、血液から尿をつくり体の中の老廃物を排泄する、血圧を調節する、ホルモンを分泌して血液をつくる、などの働きがあります。

腎臓がダメージを受けて十分に機能しなくなる状態を「腎不全」といいます。

これが長期間続くと慢性腎臓病と診断されます。

慢性腎臓病は老齢のネコちゃんで発症が多く、数ヶ月から数年に渡って不可逆的に進行性に悪化し、最終的には末期腎不全や尿毒症に至り、死亡率の高い病気です。

 

慢性腎臓病は、国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)の慢性腎臓病ガイドラインに基づき、第1〜4期の病期に分類されます。

腎臓は「沈黙の臓器」と言われており、腎機能が50〜30%以下になるまで明確な臨床症状が表れないことが特徴です。

多飲多尿(飲水量が増え、薄い尿をたくさんする)や食欲不振、体重減少などの症状が認められた時には既に、ステージ2まで進行していることが多いです。

腎機能が、30%以下のステージ3まで進行すると、食欲低下、体重減少、貧血、嘔吐など、全身に症状が表れ、血液検査で腎臓から排泄される老廃物の、尿素窒素(BUN)やクレアチン(Cre)の値が上昇します。

腎機能が10%を切った第4期では、尿毒症による、けいれんなどの中枢神経症状、食欲廃絶、重度の脱水や貧血が生じます。

 

慢性腎臓病は家族性、免疫疾患、感染症、他の泌尿器などの内臓疾患から次発的など、様々な原因で生じます。

 

失った腎機能が治ることはなく、進行していく病気のため、病態に合わせて、残りの腎臓を守ることを目的とした治療を行います。

腎臓に負担の少ない療法食、投薬、輸液療法など、症状に合わせた治療を行います。

末期では透析や、食道チューブの設置、尿毒症の治療などを行うこともあります。

 

腎臓病は、早期発見、治療で進行を遅らせ、健康寿命を伸ばすことができる病気です。

9月にネコちゃんの腎性貧血の新薬が登場し、獣医業界でも少し話題となるなど、選択肢も進化しています。

 

定期的な健康診断や、ごはん、飲水量やおしっこの量や色を把握するなど、飼い主さまの協力が必要不可欠です。

おうちのネコちゃんの健康寿命を守るために、気になる症状があった際は受診をしましょう。

気になること、ご不安なこと等ございましたら、ご相談ください。