コラム
ネコちゃん 「ネコちゃんの肝リピドーシスについて」
梅雨明けも間近となり、街路樹の緑もより深まるこの季節、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
本格的な夏を迎え、特に、肥満や基礎疾患を持つネコちゃんは過ごしづらい季節となります。
今回は、特に肥満のネコさんは気をつけたい、肝リピドーシスについてお話します。
肝リピドーシスとは、肝臓の脂質代謝が傷害され、過剰な脂肪が蓄積することで、肝臓のはたらきが急激に低下してしまう疾患です。
無治療では命に関わることもあります。
ネコちゃんの肝臓は、ごはんの脂肪分、体の脂肪組織から運ばれてきた脂肪、肝臓で合成された脂肪を蓄えています。
通常、エネルギーとしてすぐに使わない脂肪は、VLDL(超低比重リポタンパク質)に合成して脂肪組織に運ばれます。
しかし、食欲不振などで、合成に必要な栄養が不足してしまうと、肝臓から脂肪組織が上手く運搬できず、脂肪が過剰に溜まって肝リピドーシスになってしまいます。
正常な肝臓の脂肪含有量は約5%ですが、肝リピドーシスのネコちゃんは50%以上となり、肝臓の大きさも2、3倍に肥大化します。
肝リピドーシスは、肥満、代謝やホルモン異常、栄養障害、薬物、毒物など、様々な要因で発症します。
特に、中年、肥満の女の子のネコちゃんが、7日以上食欲不振や、慢性的な栄養不足になると発症しやすいとされています。
また、発症した多くのネコさんが、基礎疾患を持っているとされています。
肝リピドーシスになると、急激な体重減少、食欲不振、元気消失、嘔吐、下痢や便秘などの症状がみられます。
また、病院の検査では、肝腫大や黄疸がみられ、血液検査では肝臓に関する数値が上昇し、高ビリルビン血症が認められます。
肝臓の細胞診では、脂肪滴で腫大した肝細胞が認められます。
治療は点滴や栄養補給を行います。
お口からごはんが食べられない場合は、胃や食道にチューブを設置し、強制的に高たんぱくの流動食を与えることもあります。
他の基礎疾患が発症に関係している場合は、その治療も行います。
肝リピドーシスの予防のため、日頃から油分の高いごはんを避け、食生活に注意し、肥満予防を心がけましょう。
また、これからの季節、暑さで食欲が落ちてしまいやすい季節です。
急激な絶食や食事量の減少を避け、食欲不振や気になる症状があった場合は、早目に受診してください。
おうちのネコちゃんの健康状態を日頃から注意深くチェックしてあげることも、飼い主さまの大切な役割です。
当院では、ネコちゃんの定期的な健康診断や相談を行っております。
不安なこと、心配なことがございましたらご相談ください。