コラム

ワンちゃん「レプトスピラ症」

今年の11月初めに国内で初めて牛の届出伝染病であるランピースキン病が確認されました。2018年には一度は清浄化した豚熱が発生したり、2010年には口蹄疫が発生したりと大きなニュースになる病気は皆さんの記憶に残っていると思います。こうした病気は監視伝染病といって国や自治体が発生状況を見張り、発生予防や蔓延防止措置を取ることが法律で定められています。

そこで今回は、ワンちゃんにも関係する監視伝染病であるレプトスピラ症について考えてみましょう。

 

レプトスピラ症は、らせん菌の一種による感染症で人間にも感染する人獣共通感染症です。ネズミなどのげっ歯類の腎臓中に保菌されており、それらの尿などに汚染された土や水などを介して他の動物に感染します。菌は口腔や目の粘膜、さらに体表の小さな傷からも体内に侵入し、肝臓や腎臓で増殖します。菌の増殖によってそれらの臓器が障害されるため、黄疸や出血、急性の肝障害や腎不全が起こります。症状の出方は甚急性から慢性まで差がありますが、仮に回復した後でも数カ月は尿に菌が排泄されます。

しかしこうした症状自体はレプトスピラ症特有のものではありません。尿中の菌を培養するなどの特殊検査はありますが、結果が出るまでにある程度時間がかかるため甚急性の経過をたどった場合確定診断が間に合わないケースもあります。

 

ではそもそもかからないためにはどうしたらよいのでしょうか。

レプトスピラ症にはワクチンが存在します。山や水場によく行く、流行地でよくお散歩する子であれば予防に有効ですが、このレプトスピラ菌には複数の血清型があり、打ったワクチンに含まれないタイプのものに感染してしまうと効果が見られません。

菌が湿った環境を好むことから、レプトスピラ症は大雨や洪水の後に発生しやすい特徴があります。これは汚染された水や土壌が流出するためなので、こうした水害の後は極力外での散歩を控えたり、浸かったものは早急な消毒や処分したりするようにしましょう。

 

レプトスピラ症自体は年間に全国で30件前後とそう多い病気ではありませんが、発症すれば死亡率の高い病気です。おうちのワンちゃんを守るためにも、流行情報や災害情報に注意し、思い当たることがあればすぐ病院に伝えてくださいね。