コラム

「ネコさんと甲殻類」

謹んで新春のお慶びを申し上げます。

今年度も小鳥さんをはじめとする動物さんの健康を守り、飼い主さまに寄り添った医療が提供できるよう努めていく所存です。

 

年末年始、ご馳走を堪能された方も多いのではと思います。

おせち料理やお刺身の舟盛りに華を添えるエビは、産卵期後の秋から冬が旬で、特に海水温が下がる12~2月頃が甘みが強くなるとされていますが、実は、ネコさんが食べてしまうとリスクがあります。

 

エビやイカなどの生の魚介類や甲殻類には、チアミン(ビタミンB₁)を分解する「チアミナーゼ」という酵素が多く含まれています。

 

ビタミンB₁は、炭水化物や脂質、アミノ酸の代謝に必要な物質です。

しかし、ネコさんは体内でビタミンB₁をつくることができないため、ごはんから摂取する必要があります。

ビタミンB₁は水溶性で、一度に吸収しきれなかった分はおしっこ中に排泄されてしまうため、毎日、必要な量を摂取し続けなくてはなりません。

 

生の甲殻類や魚介類の酵素により、ビタミンB₁が分解されてしまうと、1日の必要量が確保できず、ビタミンB₁欠乏症になってしまいます。

特にネコさんは、ワンちゃんに比べて約6倍、ビタミンB₁が必要とされており、注意が必要です。

 

ビタミンB₁欠乏症になると、食欲が低下し、運動機能障害が生じます。

悪化すると、けいれん発作や神経炎、不全麻痺などの症状がみられることがあります。

 

「ネコがイカを食べると腰を抜かす」という話を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

これは、ビタミンB₁欠乏症の神経症状により、起立困難になってしまうことを表しています。

 

チアミナーゼは熱に弱く、加熱すると不活化するため、加熱するとビタミンB₁欠乏症のリスクは低下します。

市販のごはんやおやつには、加熱した甲殻類や魚介類が含まれていることもあります。

しかし、加熱した場合も、消化器症状や食物アレルギーなどのリスクがあるため、注意が必要です。

エビには、キチンという炭水化物が多く含まれており、消化に負担がかかって、嘔吐や下痢など消化器症状の原因となることがあります。

 

甲殻類や魚介類の摂取許容量は、ネコさんの体重や体調、量などによって個体差があります。

 

もし、おうちのネコさんが、甲殻類などのお刺身を食べてしまった場合、適切な処置をしないと命に関わることもあるため、病院を受診しましょう。

また、加熱の有無に関わらず、呼吸困難、痒み、湿疹、嘔吐などのアレルギー症状がでてしまった場合も、早めにご連絡ください。

 

ネコさんのごはんなど、ご心配なことがあればご相談ください。