コラム

ネコちゃん「ネコさんの三臓器炎」

新学期のスタートから1ヶ月が経ち、新しい環境にも慣れてきたこの頃、新たにネコさんをお迎えするご家庭もいらっしゃるのではと思います。
ゴールデンウイークを迎え、ネコさんとおでかけしたり、おうちで遊んだり、一緒に過ごす時間が増えることと思います。
今回は、ネコさんのご家族に知って頂きたい病気のひとつ、「三臓器炎」についてお話しします。

 

三臓器炎、とは、ネコさんの十二指腸、膵臓、胆嚢の3つの臓器に炎症が起こる病気のことです。
ネコさんの膵臓、十二指腸、肝臓、胆嚢は隣り合っています。
ネコさんの解剖学的な特徴が原因で、どれか1つの臓器で炎症が生じると、他の2つの臓器にも炎症が広がり、腸炎、膵炎、胆管肝炎が同時に発症する可能性が高いとされています。

 

膵臓には、ホルモンを分泌して血糖値を一定に保つはたらき(内分泌機能)と、消化酵素を分泌して消化を助けるはたらき(外分泌機能)があります。
消化酵素には、アミラーゼ、リパーゼ、トリプシンなどがあり、それぞれ、糖質、脂肪、たんぱく質の分解を助けるはたらきをしています。
ネコさんの膵臓の消化酵素は、「主膵管」という管を通じて、十二指腸に送られます。

 

胆嚢とは、肝臓に隣接する袋状の臓器で、胆汁を貯蔵するはたらきがあります。
胆汁は脂肪の消化を助ける消化酵素で、肝臓で分泌されます。
十二指腸に食べ物があると胆嚢が収縮し、「総胆管」という管を通じて胆汁を十二指腸に送ります。

 

ネコさんは、ヒトと同じく、総胆管と主膵管が途中で合流して1本にまとまり、1本の太い管になって十二指腸につながっている、という解剖学的な特徴があります。
そのため、胆汁と膵液は、1つの開口部から十二指腸に分泌されます。
一方、わんちゃんは総胆管、主膵管が、それぞれ十二指腸に繋がっており、胆汁と膵液が別々に十二指腸に入る構造のため、ネコさんの三臓器炎のような症状がみられることはほとんどないとされています。

 

ネコさんに、腸炎、膵炎、胆管肝炎のどれかを疑う症状がある場合、同時に、他の疾患が生じている可能性を考慮することがとても重要になります。
特に、ネコさんの膵炎は、特有の症状がなく、診断が難しいとされているため、早期発見のためには、特に重要です。

 

膵炎とは、膵臓内の消化酵素が異常に活性化され、自分の膵臓を自己消化してしまい、炎症や壊死が生じる病気です。
・元気の低下、ぐったりする
・食欲の低下、廃絶
・体重減少
・激しい嘔吐
・腹痛
・発熱、高体温
・黄疸(皮膚や目など体の表面が黄色く変色すること)
・脱水症状
などの症状がみられます。

 

膵炎の治療は、入院し、点滴や内服薬をいて行うことがほとんどです。病態によっては、低脂肪食や流動食などの食事療法を行うこともあります。

 

当院では、ネコさんの病気の早期発見、治療に努め、負担の少ない検査や治療に力を入れています。
おうちのネコさんに気になる症状や、ご心配なことがございましたら、お早めにご相談ください。